俳句*Haiku*佐々木敏光 

  近所の田貫湖にて

 (2024.2.19.更新) フランス文学 「モンテーニュ」,[ヴィヨン]ページも掲載>

お知らせ・新刊(4)

以下今回の新刊のお知らせをするが、あらためて老いの俳句をつくりながら浮かぶ次の言葉がある。

余計だと思うが、あらためてこれからの自戒とする。

「後ろめたさついでに言えば、俳人という肩書がつくことも後ろめたいね。この頃

はみんな図々しくなってえらそうにしているけど、戦前なんかは恥しいぐらいのもの

だったからね。だいたい、俳句でいっぱし結構だなんていうのは、一世紀に一人や二

人ですよ。あとはみなジャミ(釣で言う小魚のこと)。そいつらがつっぱって、かっ

こつけているのは滑稽ですよ。それに、俳句には専門的な要素なんてどこにもありま

せんよ。俳人が専門家意識を持っちゃ、おしまいです。先生、先生つて黄色い声で言

われるのは、いい気分だけどね。俳人という看板を出している以上、この点はしっか

りと自戒しておかなければならないと思うね」 (飯田龍太「太陽」1987年3月号)

 「見事な技がかえって作品を小ぶりにしていないだろうか。」   (飯田龍太)

 「こうして三十年間の句業の跡である作品を調べてみると、作法を決めたくないの

が私の作法であるという観を呈している。しかしどの句も、その時の私自身に対して

せい一杯忠実につくってきたつもりである。そのうちに、俳句は事前に予定すると成

功し難いという厄介なこともわかってきた。

 作法は選ばず、結局私がこだわるのは言葉だけである。俳句という特殊な詩形にの

せて、言葉を詩の言葉としていかに機能よくはたらかせるかという興味である。

 俳句の場で、言葉、言葉というと、こころを軽視しているととられる。だが作品を

なすにはまず何らかの意味でのこころが在り、最後に又何らかのこころが出ていなけ

ればならないのは当然である。     (『飯島晴子読本』富士見書房)

 「俳句は詩です。詩は言葉でつくります」

 「詩はむりなくわかることが大切だと思います」

 「俳句という詩は、ほんのささやかな営みですが、セオリーを身につけて、そして

セオリーを忘れることが大切です」           (田中裕明)

お知らせ・新刊(3)

 

第三句集として『富士山麓・秋の暮』が、「ふらんす堂」からこの2月中旬に発行された。

並本のこの本には帯がないので、帯の代わりに表紙の帯に当たる部分に、

次の二句を印刷してもらった。

「神死せりニーチエも死せり大銀河」

「Stay Hungry Stay Foolish 夏怒濤」

 ふらんす堂の句集の広告句は以下の句である。

大銀河神死せりニーチエも死せり大銀河

StayHungryStayFoolish夏怒濤

新緑や付喪神住む藁農家

ベランダに我待つ靴や夏の朝

炎天や大地に点として渇く

正面に雪の富士たつ家路かな

水澄むや川底歩むわれの影

大空に光はなちて薄原

わが森のわがふくろふと決めて聞く

たましひの輝き富士の初日かな

 その他、気軽に選んだ句を以下追加してみる。

神死せりニーチエも死せり大銀河

その角をまがれば光満つ枯野

水蜘蛛で銀河を渡る老忍者

山道の道の初めは狂ひ花

春の空富士をうかべて「いい感じ」

虫の闇われらそれぞれ島宇宙

ああ太宰水中深く泳ぐかな

緑陰や大地に座り読む老子

なりたきは透明人間除夜の鐘

落葉舞ふくるくるぱーのこの世かな

枯蟷螂覗くわがやの窓辺かな

牢獄としての身体(しんたい)春の雲

堂々とくたばつてゐる夏の主婦

病院の大天窓の秋の空

天高し「ご長寿祝」届きけり

おもしろきことなき世なり掃納(はきおさめ)

狼がペツトシヨツプでじやれてゐた

桜散るチエホフをしのぶ若きわれ

女坂のぼりくだりや桜時

零戦のあらはれさうな夏の雲

厭離穢土彼岸へ泳ぐ蛇の首

踏切の鳴るや子供となりて待つ

ばちあたりいつしかわれも老いて秋

月光を浴びて無人の地球かな

大仏のごとく富士座す春の空

月の森百鬼夜行のご一行

歳晩や光の都市にめしひゆく

山路行く春の産毛の中を行く

Stay Hungry Stay Foolish 夏怒濤

この妻を愛すべきなり老いの梅

   東京

エレベーターのり継ぎ老いの春の旅

監視カメラ東京駅に柿を食ふ

   バッハ ミサ曲引用

あはれんでください、独裁核の冬

 インド バラナシ

炎天下ひと焼く炎肌の泡

滝壺へ身体(からだ)よろめく齢(よわい)かな

  句集のタイトル『富士山麓・秋の暮』は少々長いが、「富士山麓にすみ、人生の秋、

ないし秋の暮を生きている」ことを表している。九月に80歳になった。

お知らせ(2)

「佐々木敏光の俳句」というユーチューブの朗読版ができています。

小山さんという方の制作です。

気晴らしに聞いてみてください。

第一句集、第二句集から選んであります。

「佐々木敏光の俳句」

なお第三句集から「佐々木敏光の俳句 その二」という朗読版もできています。

これも小山さんという方の制作です。

「佐々木敏光の俳句 その二」

 なおユーチューブの朗読としては次のものもあります。

「俳句鑑賞(中村与謝男)佐々木敏光」

お知らせ(1)

俳句個人誌『富士山麓(第二期)』は今回で終了します。

今後時々俳句はつくります。発表するきになれば、俳句に関する感想などとともに

臨時に「俳句個人誌特別号『俳句メモ』」に随時掲載します。

80歳になりました。よろしくお願いいたします。

 

十月号から抜粋

夏嵐森揺れ森とともに揺る

乱舞する秋のアカネに取りまかれ

   バッハ ミサ曲引用

あはれんでください、独裁核の冬

宗匠の一時一刻蟻地獄

ゆつたりと落花あびゐる矜持かな

滝壺へ身体よろめく齢かな

時に身をゆだねて死へと去年今年

炎天下川黒々とながれをる

顔のなき二人のくるよ月の道

    インド ワーラナーシー

炎天下ひと焼く煙肌の泡

闇に火を捧げる手筒花火かな

薪能魂(たま)のごとくに飛ぶ蛍

 

絵本「スウェーデンのすべり台」(文章付)(2019.12.)

絵本「スウェーデンのすべり台」(従来版)(2017.3.)



「佐々木敏光」ページへ(短編、詩、短歌、マンガ、絵本、未刊俳句集などを掲載)(2021.5.15.. 更新)

略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)



「俳句ノート(気になる俳句・改題)」(2023.7.23.更新)


『現代俳句抄』(個人用メモとして俳句抄出、いつの間にか巨大にそして間欠的以外は更新なし)(2020..8.16.更新)

「富士百五十句」(『富士・まぼろしの鷹』より)(NEW 2014.9.10.)

「百句選」(2014.9.10. 更新)

「俳句百物語」(NEW 2014.9.10. 更新9.16)

他選 『富士・まぼろしの鷹』の句

佐々木敏光句集 『富士・まぼろしの鷹』 

「モンテーニュ」ページへ 
「モンテーニュ『エセー』(随想録)*東洋の知恵(智恵)」へ。2015.4.19.

「ヴィヨン」ページへ 
 佐々木敏光著 『ヴィヨンとその世界
─ヴィヨンという「美しい牡」(芥川龍之介)がいた─』沖積舎刊 発売中!

文字化け対策としてアクサンをはずしてみました。

佐々木敏光による中世フランスの無頼詩人「ヴィヨン全詩・新訳」を掲載。 ヴィヨン詩集『遺言書』『形見分け』『雑詩』。 なお『隠語のバラード』は既存のヴィヨンの日本語訳詩集には未掲載の作品。 他にヴィヨン同時代の作品の独白劇(一人芝居)の翻訳や「ヴィヨン論」、 「ヴィヨン詩抄出(履歴)」も掲載。

ヴィヨンのフランス語のテキストです。文字化けします。 文字化けを避けるため「文字コード」を Latin1 にセットしてください。



     (開設:1996.8.26)